"航空宇宙自衛隊新設"

人工衛星を活用すれば、地球上のあらゆる地域へのリモートセンシングや通信、測位などが可能となることから、各国は、宇宙空間を積極的に活用しており、情報収集能力や指揮統制・情報通信能力の強化のため、画像収集衛星、通信衛星や測位衛星をはじめ各種衛星の能力向上に努めている。

こうした中、専守防衛を旨とするわが国にとっては、各種事態の兆候を事前に察知するための情報収集やわが国周辺海空域の警戒監視を強化するうえで、また、自衛隊が国際平和協力活動などにおける通信手段などを確保するうえで、いかなる国家の領域にも属さず、地表の地形などの条件の制約を受けない宇宙空間の利用は極めて重要である。

1 政府全体としての取組

(平成24)年7月に内閣府に設置された宇宙戦略室32が、政府全体の宇宙開発利用に関する政策の企画・立案・調整などを行っている。宇宙政策を巡る環境の変化や、平成25年に閣議決定された国家安全保障戦略を踏まえ、平成27年1月には、内閣に設置されている宇宙開発戦略本部においては宇宙基本計画33が決定された。

この計画は、産業界における投資の「予見可能性」を高め、産業基盤を強化するための、今後20年程度を見据えた10年間の長期整備計画となっており、

①宇宙安全保障の確保、②民生分野における宇宙利用の推進、③宇宙産業及び科学技術の基盤の維持・強化を目標としている。

また、宇宙システムへの依存度と宇宙空間の脅威・リスクが高まる中、脅威・リスクの探知・回避、システム自体の抗たん性強化、早期の機能回復などにより、宇宙空間の安定的利用を確保するため、宇宙システムの機能保証(Mission Assurance)にかかる取組を進めている。

平成28年11月には、わが国の宇宙開発利用の進展に対応していくため、人工衛星等の打上げ及び人工衛星の管理に関する法律(宇宙活動法)、及び衛星リモートセンシング記録の適正な取扱いの確保に関する法律(衛星リモセン法)の両法案が国会にて可決され、平成29年11月には、宇宙活動法の一部及び衛星リモセン法が施行された。

宇宙活動法では、打上げの許可制や、賠償措置義務、政府補償など、わが国の宇宙開発及び利用における、公共の安全確保及び当該損害の被害者の迅速な保護を図るために必要な事項が定められており、同法の一部施行により、許可申請の受付が開始された。また、衛星リモセン法では、

①リモセン装置の使用の許可、②リモセン記録(いわゆる衛星画像)を取扱う者の認定や③衛星リモートセンシング記録の提供の禁止の制度などが定められた。

2 防衛省・自衛隊の取組

防衛省・自衛隊が今後とも多様な任務を効果的かつ効率的に遂行していくためには、宇宙空間の利用が極めて重要である。このため、防衛大綱では、宇宙空間における自衛隊の体制整備に当たり、様々なセンサーを有する各種の人工衛星を活用した情報収集能力や指揮統制・情報通信能力を強化するほか、宇宙状況監視の取組などを通じて衛星の抗たん性を高め、各種事態が発生した際にも継続的に能力を発揮できるよう、効果的かつ安定的な宇宙空間の利用を確保することとしている。また、こうした取組に際しては、国内の関係機関や米国との有機的な連携を図ることとしている。その取組の一環として、防衛省は、宇宙空間における各国との連携強化や、将来の宇宙政策立案の資とするため、米空軍宇宙コマンド主催の多国間机上演習である「シュリーバー演習」に平成30年度に初めて参加する方向で検討を進めている。

防衛省では、国家安全保障戦略、防衛大綱の策定を受け、「宇宙開発利用に関する基本方針」を、平成26年8月に改訂した。

また、宇宙分野における日米防衛当局間の協力を一層促進する観点から、平成27年4月には、米国と「日米宇宙協力ワーキンググループ」(SCWG:Space Cooperation Working Group)を設置し、これまでに4回開催した。引き続き

①宇宙に関する政策的な協議の推進、②情報共有の緊密化、③専門家の育成・確保のための協力、④机上演習の実施など、幅広い分野での検討を推進している。

さらに、防衛省・自衛隊は、部隊運用で極めて重要な指揮統制などの情報通信に使用するため、平成29年1月、防衛省として初めて所有・運用するXバンド防衛通信衛星「きらめき2号」を、平成30年4月には「きらめき1号」を打ち上げた。今後、将来の通信所要などの増大を踏まえ、通信の統合化や高速・大容量化を図るため、「きらめき3号」の着実な整備を進め、Xバンド防衛通信衛星全3機体制の早期実現を目指す。

3 宇宙状況監視体制の構築

宇宙空間を利用するに当たっては、その安定的な利用を確保する必要がある。しかしながら、宇宙空間において、宇宙ゴミ(デブリ)が急激に増加しており、デブリと人工衛星が衝突して衛星の機能が著しく損なわれる危険性が増大している。

また、人工衛星に接近して妨害・攻撃・捕獲するキラー衛星の開発・実証試験が進められていると推測されており、宇宙空間の安定的利用に対する脅威が増大している。このため、防衛省は、宇宙基本計画を踏まえ、宇宙航空研究開発機構(JAXA:Japan Aerospace Exploration Agency)などの国内関係機関や米国と連携しつつ、宇宙を監視し、正確に状況を認識するための宇宙状況監視(SSA:Space Situational Awareness)体制を平成34年度までに構築することを目指しており、わが国の人工衛星にとって脅威となる宇宙ゴミなどを監視するためのレーダーと運用システムの整備を進めている。

その際、関係政府機関などが一体となった効果的な運用体制を構築していく必要がある。この点、JAXAは、低高度周回軌道(高度1,000km以下)を監視する能力を有するレーダー及び静止軌道(高度約3万6,000km)を監視する能力を有する光学望遠鏡を整備する計画を進めており、防衛省が整備する主として静止軌道を監視する能力を有するレーダーと合わせ、わが国として効率良く宇宙空間を監視する体制が整う計画となっている。

これらの体制整備にかかる取組に際して、空自はこれまでの防衛力整備により得た知見を活用して、レーダーや運用システムなどの整備を行うとともに、それらを運用する部隊の新編に向けた検討を進めている。

また、SSA体制の構築のためには、諸外国との継続的な意見交換や情報共有、今後の協力のあり方に関する議論を行うことが不可欠である。防衛省は、米戦略軍主催のSSA多国間机上演習「グローバル・センチネル」に、平成28年から毎年参加しており、SSA運用にかかる知見を修得するとともに、今後の米国などとの協力強化を図っている。

こうしたSSA能力の向上の取組は、宇宙空間における新たな脅威に対する抑止力の向上にも寄与するものである。

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