反グローバリズムの動き
2010-08-14
イタリアの現在は連立政権である。
そもそもイタリア政治とは解りづらい面が多々あるのだ。その最大の理由は混乱が永遠と続いているからである。まず、構造から簡単に見ていきたい。
イタリアは戦後、62回もの政権交代が起こっている国家だ。何故みな短命であるのか。……
それは、ムッソリーニにあると云ってよい。ムッソリーニが自身の政治をやり易くするために首相であり、そして議会までをも掌握したのだ。事実上の独裁者である。
その反省から戦後には権力が集中しないようにしたのだ。しかし非常に解りづらい構造で大統領は首相の任命権を持っているが権力は持っていない。首相が政治のトップでありその下に議会がある。
昨年3月に選挙があり、ここでまた政権交代が起きた。
第一党になった“ 五つ星運動党 ” は過半数取ることが出来なかったのだ。第二政党が北部の “ 同盟 ” である。
現在はこの二党が連立政権を組んでいる状況である。
ただ、3月の総選挙後、約三ヶ月もの間政治的な空白が生まれてしまったのだ。この時に首相任命権を持つ大統領が選んだ人物が、なんと大学教授だったのである。
フィレンツェ大学教授のコンテ氏と云う人物を首相に任命したのだ。この教授の組閣人事案の中にEU離脱派の人物がいた。イタリア大統領はEU協調派であるのだ。このため、この時に混乱が生じたのであるが、最終的には金融混乱も相まって大統領が容認したのだ。
そして昨年6月、コンテ内閣がスタートした。EUに対する懐疑的な政権が出来たわけである。この政権の副首相になった人物が、マッティオ・サルビーニだ。第二党の党首が副首相になったわけである。ところがこのサルビーニが先週、連立解消を云い始めたのだ。そして今年10月には総選挙をやろうと持ち出している。これに対してコンテ首相は来年の予算も決まってないことから反対の立場を取っているのである。
このサルビーニと云う人物とは、反移民を提唱している同盟党の党首である。そもそも欧州では反移民と云うことで英国のBrexitが起きた。また仏のマリーヌ・ルペンと云う女性が党首の党も移民反対と云うことで、Brexit型の政党が欧州には増えているのだ。そのイタリア版がこの同盟党なのだ。そして党首のサルビーニは何をしようとしているのか??…
先週連立解消を云い初め、今週政府に対して不信任案の提出をすると云われている。その背景には、この同盟党の支持率が上がっていることがあるのだ。連立を組む五つ星党とはEU懐疑的と云うことでは同じなのだが、経済政策での対立が激しいのである。
例として、イタリアとフランスを結ぶ高速鉄道の案件がある。これはフランスとイタリアの北部を結ぶものであるのだ。北部を地盤とする同盟党は大賛成だ。そして五つ星党は反対していることから対立が深まっているのだ。また、同盟党は減税政党であり、ゆくゆくはフラットタックスを実現すると訴えている。元々、負債が欧州で一番多い国であるのでイタリアの国債は世界的にも非常に危ないと見られているのだ。更に今現在、連立解消の動きを受けて更にイタリア金融市場は混乱し相場が崩れている状態にあり利回りが0.2%上昇しているのだ。しかし何処の国も同じように反対勢力からの批判はサルビーニの支持率が上がっているからだとの稚拙な理由から猛反発しているのである。
現時点での五つ星党の支持率は昨年30%だったのが15%まで落ち込んでおり、同盟党は逆に15%から40%を超えるまでになっているのである。完全に逆転していることから、今選挙をやればサルビーニが勝つと云うことが出来るのである。サルビーニ氏が不信任案を提出すれば、コンテ首相は敗れることになるであろう。敗れた場合には大統領に辞表を提出することになる。そして唯一権限を持つ大統領はどうでるのか。…
大統領が総選挙を行うか、新たな連立を組むしか方法がないのである。さて、どうなるのか。…
サルビーニ氏は総選挙になれば過半数を獲得するて見られている。そうなれば完全な単独政権になり自分が首相になると踏んでいるのだ。そしてサルビーニ氏の本当の狙いはイタリアのEU離脱にあるのである。
このEU離脱、この10月に英国がまさに離脱するのだが、イタリアがEUを離脱する難易度は非常に高いのである。
と云うのは通貨にあるのだ。元々、英国は通貨でEU圏に入っていなかったのだ。ポンドを維持していた。
しかし、イタリアはEU圏にどっぷり浸かっており、このユーロからも離脱しなければならなくなるのである。更に更にイタリア政府の莫大な政府債務だ。イタリア政府債務は GDP比では約140%~150%である。これは欧州の中ではダントツであり世界の先進国の中でも政府債務の大きさはイタリアが世界第二位である。第一位はわが国日本であるが、これを多くの人、日本人ちも多いのだが、日本の政府債務は90%以上が円建て債務である。簡単に云えば、家庭内での借金であり、他所様(外国)からの債務ではないのである。日本国内で完結しているものだ。また同時に日本は世界一の債権国でもあるのだ。
さて、サルビーニ氏は10月に総選挙を実施したいと考えている。これは英国のBrexitと重なるからだ。更には同じ欧州ではドイツ銀行の債務問題がある。支那に肩入れし過ぎたことが原因の自業自得なのだが、廻りには大変な迷惑である。これがいつ火を噴くか予断を許さないのであるのだ。
このドイツ銀行問題と英国Brexitがリンクしてなおかつイタリアの総選挙が10月に行われサルビーニが勝つと云うことになった場合の経済的混乱状況を招くことになるのかが解らない状況である。
もしかしたら第二のリーマンショックがイタリア、英国、ドイツ発で勃発するかと云うことが想定されるのである。